crypto/uuid: add API to generate and parse UUID
要約
概要
crypto/uuid パッケージを Go 標準ライブラリに追加し、UUID(Universally Unique Identifier、世界的に一意な識別子)の生成とパースのための API を提供するプロポーザルです。現在 Go エコシステムで最も広く使われているサードパーティライブラリ github.com/google/uuid の中核機能を、厳選された最小限の API として標準ライブラリに取り込むことを目指します。
ステータス変更
active → likely_accept
2026年2月25日、@aclements がプロポーザルレビューグループを代表して likely accept と宣言しました。最終的なAPI仕様(https://github.com/golang/go/issues/62026#issuecomment-3961250320)が確定し、Parse が受け付けるフォーマットの拡充、Nil と Max の変数化、Compare メソッドのドキュメント改善が合意されたことを受けた判断です。
技術的背景
現状の問題点
GoはUUID生成・パースの標準APIを持たず、実質的に github.com/google/uuid が業界標準として機能しています。@rolandshoemaker のエコシステム分析によると、このパッケージの利用関数トップは New(36%)、UUID.String(35%)、Parse(8%)であり、極めて基本的な機能のみに集中しています。一方で同パッケージはメンテナンスが停滞しており、時代とともに肥大化したAPIの整合性も問題となっています。
また crypto/rand の改善(#66821)によりランダム生成の失敗が事実上なくなったため、google/uuid の New() (UUID, error) というシグネチャは時代遅れになっています。
提案された解決策
crypto/uuid パッケージとして以下の最小限のAPIを追加します(2026年2月25日時点の最終仕様)。
package uuid // crypto/uuid
// UUID は RFC 9562 に準拠した16バイトの値
type UUID [16]byte
var (
Nil = UUID{} // Nil UUID: 00000000-0000-0000-0000-000000000000
Max = UUID{0xff, 0xff, ..., 0xff} // Max UUID: ffffffff-ffff-ffff-ffff-ffffffffffff
)
// Parse は以下の複数形式を受け付ける(google/uuid との互換性を保つ)
// - f81d4fae-7dec-11d0-a765-00a0c91e6bf6 (標準形式)
// - {f81d4fae-7dec-11d0-a765-00a0c91e6bf6} (波括弧形式)
// - urn:uuid:f81d4fae-7dec-11d0-a765-00a0c91e6bf6 (URN形式)
// - f81d4fae7dec11d0a76500a0c91e6bf6 (ハイフンなし)
func Parse(s string) (UUID, error)
func MustParse(s string) UUID
func New() UUID // 現在は NewV4 と同等
func NewV4() UUID // 122ビットのランダムデータ
func NewV7() UUID // 上位48ビットにタイムスタンプを含む
func (u UUID) String() string
func (u UUID) MarshalText() ([]byte, error)
func (u UUID) AppendText(b []byte) ([]byte, error)
func (u *UUID) UnmarshalText(b []byte) error
func (u UUID) Compare(v UUID) int
さらに database/sql をUUID対応させる変更も含まれます。ドライバが独自にUUIDを処理しない場合、database/sql が自動的にUUIDを文字列へ変換して扱います。
これによって何ができるようになるか
Go開発者は UUID の生成・パースにサードパーティ依存なく対応できるようになります。特にサーバーサイド・データベース連携を行うアプリケーションで恩恵が大きいです。
コード例
// Before: サードパーティライブラリが必要
import "github.com/google/uuid"
id, err := uuid.NewRandom() // エラーを返すが実際には失敗しない
if err != nil {
log.Fatal(err)
}
fmt.Println(id.String())
// After: 標準ライブラリで完結
import "crypto/uuid"
id := uuid.New() // エラーなし、シンプル
fmt.Println(id.String()) // f81d4fae-7dec-11d0-a765-00a0c91e6bf6
// データベース用のソート可能なUUID生成
id7 := uuid.NewV7()
// 既存のUUID文字列をパース
parsed, err := uuid.Parse("f81d4fae-7dec-11d0-a765-00a0c91e6bf6")
// 定数として使用
var emptyID = uuid.Nil
// google/uuid との相互変換(型が同じ [16]byte なので自動的にキャスト可能)
// googleUUID := googleuuid.UUID(cryptoUUID)
議論のハイライト
[16]byteを基底型とした理由:github.com/google/uuidと同じ基底型を使うことで、2パッケージ間の変換が型キャスト一つで可能になる。type UUID stringでは任意の文字列が格納でき不変条件を保証できないため却下された。New()のデフォルトはUUIDv4: UUIDv7はタイムスタンプを含むためプライバシー上の懸念があり、また分散データベース(Cloud Spannerなど)ではUUIDv4よりパフォーマンスが悪化するケースがある。一方UUIDv4はシンプルで問題がないため、New()のデフォルトとなった。- UUIDv5(SHA-1ベース)は除外: エコシステム分析で
NewSHA1の利用はわずか0.05%(約20件)であり、SHA-1が暗号学的に安全でなくなった現在、新規利用が増えるとは考えにくい。実装は約10行で外部パッケージで対応可能と判断された。 Parseの許容フォーマット: 当初は標準のxxxxxxxx-xxxx-xxxx-xxxx-xxxxxxxxxxxx形式のみの厳格なパースが検討されたが、google/uuidとの実行時互換性を優先し、波括弧形式・URN形式・ハイフンなし形式も受け付けることに決定。NilとMaxの実装形式: 当初は関数(func Nil() UUID)として提案されていたが、google/uuidとの一貫性と利便性のため変数(var Nil = UUID{})に変更された。コメント欄ではconstにしたいという声もあったが、Go言語の現状では配列型の定数はサポートされていない。